魚の串焼きは酒飲みが考えたかも

魚料理で、魚を串に刺して焼くケースは、それほど多くはありません。酒の肴を意識した料理を考えるときに、客に提供しやすいという理由で串に刺して出されるようです。それは、酒を飲む場合は、串を持ってそのまま口に運ぶほうが、酒を離さずに済み、飲みの雰囲気を壊さないためと言われます。一緒に飲む相手とのコミュニケーションについても、断然とりやすくなります。焼き鳥をつまみに酒を飲むケースを考えれば、納得できます。焼き鳥の場合は、タン、ハツ、レバー、つくね、どんなネタも串に刺さされ、塩を振ったりタレにつけた後に焼かれて出されます。客は、その串をつまんで、七味などをかけたりして口へと運んでいきます。その雰囲気をそのまま魚でも味わいたいという気持ちは十分に共感もできます。
そういえば、串焼きにして提供される「ネギマ焼き」は、酒の肴としてたいへん人気のあるメニューですが、容易に焼き鳥を連想させます。ネギマ焼きは、もともと職人が好んで食する「ネギマ鍋」が発祥だったとはいえ、マグロとネギを交互に串に刺して焼くのは、焼き鳥のスタイルそのままです。ただ、焼き鳥が串に出して提供されるのは、忙しい店側が、残った串の数を数えて勘定をするほうが効率的だったので受け入れられたという説もあって、面白いものです。
サカナを串に刺してから焼き台で焼いていく串焼きは、アナゴやウナギといった細長いサカナの場合にもよく用いられます。もちろん、鰻丼、穴子丼など丼物として出されるときに、最終的には丼に盛られたご飯の上にのせて、丼ツユをかけて出すという形がとられながらも、最初は串に刺してタレをつけて焼かれることから、あまり違和感もありません。この発展形が串焼きだったのかもしれません。ウナギの串焼きの場合だと、ウナギの肝焼きが人気メニューだったことも手伝っているのかもしれません。串に刺した蒲焼きとセットにして出せばバリエーションもあって見栄えもよく、客のほうも注文しやすいのでしょう。
うなぎの串焼きを仕入れてみて!人気飲食店のメニュー成功例4選」にあるように、鰻丼や鰻重などでウナギを捌いた後に串に刺して焼く場合、焼くという作業は一生かかっても完璧といえるまでになることはないということで、「焼き一生」という言葉が使われたりします。熟練の技に達するのがいかに難しいかということです。ほかに、串打ちは三年かかり、割きは八年と言われます。ほかにも、アサリ数個を串に刺して揚げる「アサリの串揚げ」は木更津では郷土料理と言われるほど人気があり、ハマグリなど貝類はいろいろなものが串に刺されて焼いたり揚げたりされています。最近では、ホンビノス貝という貝の人気が定着してきて、寿司屋さんのメニューなどにも登場するようになりました。